
介護の現場で長年働いていると、時に「このままでいいのだろうか」と自問自答することがあります。特に大規模施設で働く介護士の方々は、業務の多さに追われ、本来の「ケア」に集中できない状況に疑問を感じることも少なくありません。
私も7年以上特別養護老人ホームで働いた後、思い切ってグループホームへの転職を決断しました。その決断は、私の介護士としてのキャリアだけでなく、人生観までも変えるものでした。

この記事では、私自身がグループホームに転職して実感した5つの大きな変化をご紹介します。
グループホームとは?
本題に入る前に、グループホームについて簡単に説明します。グループホームは、認知症の高齢者が共同生活を送る少人数制の介護施設です。一般的に1ユニット9名程度の入居者で構成され、「家庭的な環境」の中でケアを提供するのが特徴です。
特別養護老人ホームや老人保健施設などの大規模施設と比較すると、より密接な関わりが持てる環境であり、入居者一人ひとりに寄り添ったケアが可能になります。
グループホームへの転職で感じた5つの変化
1. 入居者との関係性が深まった
大規模施設では、多くの入居者を限られた職員で世話をするため、一人ひとりに十分な時間を割くことが難しいのが現実です。日々の業務に追われ、最低限のケアをこなすことで精一杯という日も少なくありませんでした。
一方、グループホームでは入居者の数が限られているため、一人ひとりとじっくり向き合える時間が格段に増えました。日々の会話の中から趣味や好みを知り、その方の人生史を理解することで、より適切なケアが提供できるようになったのです。
たとえば、以前は把握していなかった「この歌が好き」「若い頃はこんな仕事をしていた」といった情報をもとに、その方に合わせたレクリエーションやコミュニケーションを取れるようになりました。
入居者の方から「あなたが来ると安心する」「話を聞いてくれてありがとう」と言われることが増え、介護士としての喜びを改めて感じられるようになったのは大きな変化でした。
2. 「介護」から「生活支援」へ視点が変わった
大規模施設では、どうしても「介護」に焦点が当たりがちです。食事、入浴、排泄といった基本的な生活動作の支援が中心となり、ルーティンワークに終始してしまうことも多くありました。
グループホームに転職して気づいたのは、ここでは「生活を支える」という視点が強いということです。入居者は単なるケアの対象ではなく、共同生活を送る「生活者」として尊重されます。
例えば、食事の準備を一緒にしたり、洗濯物をたたんだり、季節の飾り付けを考えたりと、日常生活のあらゆる場面に入居者が参加します。これは認知症ケアにおいても非常に効果的で、「できることを続ける」ことで心身機能の維持につながっています。
「〇〇さんはこのお皿を洗うのが得意」「△△さんは野菜の皮むきが上手」といった、その方の強みを活かした関わりができるようになり、介護の質が変わったと感じています。
3. チームワークが密になり、意見が反映されやすくなった
大規模施設では、組織の階層が複雑で、現場の意見が上層部に届きにくい構造がありました。また、多くのスタッフが入れ替わり立ち代わり勤務するため、情報共有やチームとしての一体感を持ちにくいことも課題でした。
グループホームでは、スタッフの数が限られているからこそ、一人ひとりの意見が重視されます。「このケアの方法を変えてみたい」「こんなイベントをやってみたい」といった提案が、すぐに検討され実行に移されることが多くなりました。
また、スタッフ間のコミュニケーションも密になり、入居者の小さな変化も見逃さず共有できるようになったことで、早期対応が可能になりました。これは入居者の安全確保や健康維持に大きく貢献しています。
毎日のミーティングも形式的なものではなく、本音で話し合える場になっています。「この対応で良かったのか」「もっと良い方法はないか」と互いに学び合える環境は、介護士としての成長にも繋がっていると感じます。
4. 業務の幅が広がり、スキルアップできた
大規模施設では、業務の分担が明確で、「介護士はこの範囲」「看護師はこの範囲」と役割が固定されがちでした。それは効率的である反面、自分のスキルを広げる機会が限られていたとも言えます。
グループホームでは、少人数のスタッフで運営するため、一人ひとりが多様な役割を担います。介護記録の作成はもちろん、ケアプランへの意見具申、家族との連絡調整、地域との交流イベントの企画など、業務の幅が格段に広がりました。
特に、認知症ケアに関する専門知識を深く学ぶ機会が増えたことは大きな収穫です。認知症の症状は一人ひとり異なり、その方に合わせたアプローチが必要になります。グループホームでは、個別性の高いケアを実践する中で、認知症ケアのスキルが向上したと感じています。
また、少人数だからこそ、介護士として「考える力」が鍛えられました。マニュアル通りではなく、その場の状況に応じた臨機応変な対応が求められるため、常に頭を使う必要があります。これは私自身の成長にも繋がっていると実感しています。
5. ワークライフバランスが改善し、心に余裕ができた
大規模施設では、夜勤を含む不規則なシフト勤務や、突発的な人員不足による呼び出しなど、プライベートな時間を確保しづらい環境でした。また、身体的にも精神的にも負担が大きく、常に疲労感を抱えていたことを覚えています。
グループホームに転職してからは、シフトが比較的安定し、予定が立てやすくなりました。もちろん夜勤はありますが、担当する入居者数が少ないため、夜勤中の負担も相対的に軽減されています。
また、入居者一人ひとりとゆっくり関わることができるようになったことで、「時間に追われている」という焦りが減り、心に余裕が生まれました。この心の余裕は、より質の高いケアを提供することにも繋がっています。
以前は休日も疲れを引きずることが多く、家族との時間も十分に楽しめないことがありましたが、今は仕事とプライベートのバランスが取れるようになり、充実した日々を送れています。
グループホーム転職の注意点
ここまでグループホームへの転職の良い面を中心に紹介してきましたが、もちろん注意点もあります。
1. 少人数体制のため、責任が重くなる
大規模施設に比べて職員数が少ないため、一人が担う責任は大きくなります。特に夜勤は1〜2名体制が一般的で、緊急時の判断や対応が求められることもあります。
2. 入居者との距離が近いからこそ生じる難しさ
入居者との関係性が深まる分、感情移入しすぎてしまうこともあります。特に看取りの場面では、大規模施設以上に強い感情を抱きやすく、心理的な負担が大きいこともあります。
3. 施設によって待遇に差がある
グループホームは小規模事業所が運営しているケースも多く、給与体系や福利厚生は施設によって大きく異なります。転職前には必ず条件を確認しましょう。
グループホームへの転職をお考えの方へのアドバイス
最後に、グループホームへの転職を検討している介護士の方々へのアドバイスをまとめます。
1. 見学や体験入職を活用する
求人情報だけでは分からない雰囲気や人間関係を知るために、可能であれば見学や体験入職を活用しましょう。多くのグループホームでは、そういった機会を設けています。
2. 認知症ケアへの関心を持つ
グループホームは認知症の方を対象とした施設です。認知症ケアに関心があり、一人ひとりの生活史や個性を大切にしたいと考える方に向いています。
3. コミュニケーション能力を高める
少人数のチームで働くため、スタッフ間のコミュニケーションは非常に重要です。自分の意見を伝えるだけでなく、他者の意見も尊重できる姿勢が求められます。
4. 自分に合った規模や運営方針の施設を選ぶ
グループホームといっても、運営方針は施設によって異なります。理念や方針に共感できる施設を選ぶことで、長く働き続けることができるでしょう。
まとめ:グループホームという選択肢
グループホームへの転職は、私の介護士としてのキャリアに新たな風を吹き込んでくれました。業務量に追われ、本来の「ケア」の意味を見失いかけていた私に、介護の本質を思い出させてくれたのです。
もちろん、全ての介護士にグループホームが合うわけではありません。大規模施設にはその良さがあり、そこでやりがいを感じている方も多いでしょう。
ただ、「もっと入居者と向き合いたい」「一人ひとりに合わせたケアをしたい」と考えている方には、グループホームという選択肢は大きな可能性を秘めています。
介護の仕事は決して楽ではありませんが、入居者の笑顔や「ありがとう」の言葉が何よりも大きな報酬となります。そんな喜びを日々感じながら働けるグループホームでの勤務を、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。





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